松井谷
今日の現場作業は同じ町内の松井谷と呼ばれる場所に有る墓地。
かなり昔から有る墓地だが現在は新しく整備されている。
その名の通り谷になっていて、谷川が流れている。
いや、谷川が流れていた。
今は治水の簡易ダムが有って谷川とは呼べない有様。かろうじて水が流れているっぽい程度。
小学生の頃、何かの課題で面白い、いろんな石を拾ってくるというのが有った。(と思う)
町内には河原と呼べる物ががほとんど無いので、まだ現在の様に整備されていなかった松井谷に同級生3人と逝ったのだった。
緑が鮮やかだった記憶が有るので5〜7月つまり今頃の時期だと思う。
小さな河原でひとしきり物色(遊んだ)した後、めぼしい物は見つからず帰る事にした。
帰路の途中、道草してなかなか来ない同級生を待っていたら脇道が有るのに気がついた。
何気なく入って逝くと、ちょっと広くなった草むらの中に廃屋らしきあばら屋が有って、そのあばら屋の前に純白の布に包まれた箱が置いてあった。
あばら屋の前と言うよりも、草むらの真ん中に置かれた机もしくは何かの台か井戸の上にそれは置かれていた。
当時は葬儀の経験は無かったので、それが骨箱だとは知り得なかった。
しかし、子供心にもそれに触れる事が禁忌だと言う事は容易に推測できた。
鮮やかな緑とあばら屋。 人が住んでいた頃は多分畑か何かだったろうと思われる草むら。 その草むらの真ん中にポツンと置かれている周囲とは不釣り合いな全く汚れの無い純白の布に包まれた骨箱。
それが何で何故そこに置かれているのか、そんな情景に例えようも無い非現実さと不可思議さを感じ、その純白の布に包まれた箱が何であるか確かめたくなった。
一歩近づく。
二歩近づく。 左胸にチクッとする痛みを感じた。
三歩近づく。 刺されるような強い痛みに変わる。
四歩近づく。 心臓をえぐられるような激しい耐えがたい痛み。
一歩下がる。
二歩下がる。
下がる度に痛みは消えてゆく。
元の道に戻ると同級生が待っていた。
真っ青な顔をして何か有ったのかと聞かれた。
何んでもない。 と答えた。
遠い昔の事。
整備されているので、今はその場所は無いのだと思う。
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